次の巨大地震はいつ、どこで起きるのか。京都大学大学院人間・環境学研究科の鎌田浩毅教授は「2030~40年に、西日本の太平洋沖の『南海トラフ』で発生することが複数のデータから予測されている」という——。

※本稿は、鎌田浩毅『首都直下地震と南海トラフ』(MdN新書)抜粋の一部を再編集したものです。

地震
写真=iStock.com/1001nights
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海の地震は発生時期が計算できる

地震学が我が国に導入されて地震の観測が始まったのは、明治になってからです。それ以前の地震については観測データがないので、古文書こもんじょなどを調べて、起きた年代や震源域を推定しています。その結果、私たちが現在、最も心配している地震の第1は、これから西日本の太平洋沿岸で確実に起きるとされている巨大地震です。

東海から四国までの沖合いでは、過去に海溝型の巨大地震が、比較的規則正しく起きてきました。こうした海の地震は、おおよそいつ頃に起きそうかが計算できます。この点が、1000年以上のスパンで、いつ起きるとも起きないともわからない活断層のもたらす直下型地震と大きく違うのです。

次に必ず来る巨大地震の予想される震源域は、西日本の太平洋沖の「南海トラフ」と呼ばれるところにあります。東日本大震災の主役は太平洋プレートでした。しかし次回の主役は、その西隣りにあるフィリピン海プレートです。海のプレートが西日本に沈み込む南海トラフは、いわばフィリピン海プレートの旅の終着点です。

太平洋プレートの終着点は「日本海溝」や「伊豆・小笠原おがさわら海溝」と呼び、フィリピン海プレートの終着点は「南海トラフ」と呼ぶのですが(図表1)、ここで海溝とトラフという言葉の違いについてお話ししておきましょう。

トラフは日本語では「舟状海盆しゅうじょうかいぼん」です。読んで字のごとく舟の底のような海の盆地です。海の中になだらかな舟状の凹地形をつくりながら、プレートは沈み込んでいきます。それに対して「海溝」は、プレートが急勾配で沈み込んでいく場所にできる、深く切り立った溝です。

海溝もトラフもプレートの終着点にできるものですが、地形の違いによって、名前を分けているのです。日本列島の周辺にはトラフとしては他に、沖縄トラフ相模さがみトラフ、駿河するがトラフなどがあり、また海溝としては日本海溝伊豆・小笠原海溝マリアナ海溝、千島海溝、琉球海溝などがあります。

さて、南海トラフの海域で起こる東海地震東南海地震・南海地震の3つについて、近年盛んに発生の危険性が高まったと騒がれています。南海トラフ沿いの震源域の近傍には、太平洋ベルト地帯という大工業地帯・産業地域があります。ここで巨大地震が発生すれば日本の産業経済を直撃することは免れません。

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南海トラフ地震」の予兆あり 複数が連動すればM10規模、津波犠牲者47万人も〈AERA

 

日本周辺には、(1)北米プレート、(2)太平洋プレート、(3)ユーラシアプレート、(4)フィリピン海プレートの四つがひしめき合っている。それらのプレート同士の反発やひずみが、巨大地震を引き起こしてきた。  代表的な例は2011年3月の東日本大震災だ。過去最大規模のマグニチュード(M)9.0を記録したこの地震は、北米プレートの下に太平洋プレートが潜り込む「境界断層」にひずみがたまり、その断層が大きく滑って発生した。典型的な「海溝型地震」といわれる。宮城県北部から北方領土に至るラインにたまったエネルギーは、まだ出し切られておらず、地震が発生しやすい状態にあるという。  高橋特任教授がいま、最も注目しているのが、南関東沖からフィリピンまで続くフィリピン海プレートだ。 「フィリピン海プレートが北米プレートやユーラシアプレートを圧迫し、相当なひずみがたまっています。これらのプレートが我慢できなくなって跳ね上がると、海溝型地震が起きる可能性があります」 ■今年に入って予兆が…  今年に入り、その予兆があるという。例えば、2月1日に徳島県北部、同18日には愛知県西部、3月15日に和歌山県北部、4月5日に静岡県西部と太平洋側を震源とする震度3や5弱の地震が相次いだ。ほかに日向灘紀伊水道三重県南部でも地震が続いている。高橋特任教授は「これらは南海トラフ地震の予兆と見ていい」と話す。  また、フィリピン海プレートと北米プレートの境界には、1923年の関東大震災を引き起こしたとされる「相模トラフ」と呼ばれる震源域がある。東京都、千葉県、茨城県南部では、フィリピン海プレートと北米プレートの境界付近を震源とする地震も増えている。  さらに、昨年から今年にかけて、奄美大島から琉球諸島、台湾にかけても地震が頻発している。これもフィリピン海プレートユーラシアプレートの境界付近で起きている地震だ。  高橋特任教授は言う。 「地震は単体で捉えるのではなく、つながっていると考えるべきです。首都圏、南海トラフ琉球諸島、台湾。いずれもフィリピン海プレートが影響しています。これらが連動して大地震が起きる可能性があります」  これら連動して起きる大地震を高橋特任教授は「スーパー南海地震」と命名。この地震が一度に起きればM10近い規模になり、津波による犠牲者だけで47万人以上になると試算する。 「いつ起きてもおかしくない大地震に備えておくことが重要です」(高橋特任教授)

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