人口の集中

 国連がまとめた世界都市人口予測2018年改訂版によると、世界の都市圏の人口は、東京都市圏が3,700万人と最大で、以下2,900万人のデリー(インド)、2,600万人の上海(中国)と続くとのことです。東京都の人口は1,400万人、うち区部の人口は972万人、区部の人口密度は1平方キロ当たり1万5千人を超えます。日本全体の人口密度は335人ですからその集中度が分かります。ちなみに、全国の都市の人口密度の上位4市は、埼玉県蕨市14,500人、東京都武蔵野市13,700人、狛江市13,300人、西東京市13,200人で、以下、大阪市、東京都三鷹市、国分寺市、大阪府守口市、東京都調布市、小金井市と続きます。

人口と共に加速度的に増える地震被害

 平成の30年間に内陸直下でのM7.3の地震が3回起きました。1995年兵庫県南部地震、2000年鳥取県西部地震、2016年熊本地震です。震源深さは、それぞれ16km、9km、12kmで、最大震度は7、6強、7です。震源深さが最も浅い鳥取県西部地震の最大震度が小さいのは、震度観測点の密度や地盤の堅さによると思われます。この3つの地震による全壊家屋数は、104,906棟、435棟、8,667棟、直接死の人数は、5,500人、0人、50人です。兵庫県、鳥取県、熊本県の人口密度は1平方キロ当たり651人、158人、235人ですから、阪神地区の人口密度の高さを考えても、被害の差は人口比より遥かに大きくなっています。

大都市特有の被害

 2018年に起きたM6.1の島根県西部の地震と大阪府北部の地震でも同様の被害の差がありました。2つの地震の震源深さは12と13kmでほぼ同じですが、最大震度は5強と6弱でした。死者は0人と6人、負傷者は9人と462人、住家被害は、全壊17棟と21棟、半壊58棟と454棟、一部損壊576棟と56,873棟です。負傷者と一部損壊家屋数の差が際立っています。ちなみに、大阪府北部の地震での地震保険支払金額は1,200億円を超え、阪神・淡路大震災の1.5倍にもなりました。そのほとんどは一部損に対する支払いです。

 大阪府の人口密度は島根県の46倍です。人が集まると、軟弱な地盤に高層の建物を建てます。気象庁が発表する震度は多くの場合、公的施設の近くの地面の揺れです。実際に住民が経験するのは建物の中の揺れです。背の高い建物が多い大都市では、気象庁発表震度より遥かに強い揺れに見舞われます。

災害危険度の高い場所の居住人口

 1923年大正関東地震での東京市内の死者は約7万人でした。うち約6万人は隅田川の東側で命を落としています。ここは軟弱地盤ゆえに強く揺れ、木造家屋が倒壊して出火し、密集した家屋が延焼して多くの人が焼死しました。当時、隅田川の東側の人口は東京市の約2割でしたから、東側の死亡率は西側の20倍以上になります。隅田川の東にまちが広がっていなかった1703年元禄関東地震のときの江戸府内の死者は340人と言われていますから、災害危険度の高い場所にまちが広がることの怖さがよく分かります。

 現在、海抜ゼロメートルの地域が広がる江東デルタ地帯には200万人弱が居住しています。万が一、堤防が破堤したり越流したりすれば長期に湛水します。湾岸に林立するタワーマンションは孤立するかもしれません。令和元年東日本台風で地下室が水没した武蔵小杉の高層マンションを思い出してみましょう。

揺れの強い高層ビルではエレベーター停止で影響も

 大阪府北部の地震では、6万6千台ものエレベーターが緊急停止しました。当時の大阪府内のエレベーター保守台数は約7万6千台、兵庫県や京都府を合わせると12万台程度でしたから、約半数が緊急停止したことになります。浅部直下の地震だったため、P波を検知して最寄り階に停止する前に強い揺れが到達して、多くの閉じ込め事故が発生しました。

 10月7日の千葉県北西部の地震でも7万5千台のエレベーターが停止しましたが、深さ75kmの地震でしたから、時間猶予があり閉じ込めは微少に留まりました。ちなみに、全国のエレベーター保守台数77万台のうち17万台が東京都にあります。人口当たりの台数は全国平均の倍です。エレベーター保守員の人数には限りがあるので、早期の救出や再稼働は困難です。

 高さ100mを超える超高層ビルは日本国内に約1150本ありますが、半分以上は東京都に集中しています。高層エレベーターは途中階を跳ばし、揺れの検知が難しい長周期地震動では強く揺れますから、閉じ込めが心配です。また、建物に勤務・居住している人数も多いので、エレベーターが停止すれば事業や生活に与える影響は甚大です。

上場企業が東京に集中、多くが高層ビルに

 全国の上場企業3,842社のうち、1,991社が東京に本社を構えています。中でも、港区452社、千代田区382社、中央区304社と、都心3区に半分以上が集中しています。この3区に存在する100m超の超高層ビルは166本、109本、60本と、都内の約1/3を占めます。上場会社の多くが高層ビルに入居していると思われます。高層ビルの事業継続性の問題に加え、企業の中枢機能が局所的に集中していることは我が国経済にとって極めてリスキーです。2018年度の都道府県別のGDPで見ても、1位が東京都105兆円で、2位愛知県39兆円、3位大阪府39兆円、4位神奈川県35兆円と比べて抜きんでています。首都直下地震の発生を考えると、経済面でも地方への分散が望まれます。

 産業界の集中とは逆に東京の食料自給率はほぼ無いに等しく、第一次産業就労者比率は全国で最低、第二次産業就労者比率も沖縄、高知について下から3番目と、第三次産業に偏ったいびつな産業構造になっています。

大学の集中と一人世帯の多さ

 大学生も東京に集中しています。全国の大学生262万人のうち、約1/4の67万人が東京にいます。国立大学については44万人のうちの約1割ですが、私立大学は205万人の約1/3の62万人が東京に集中しています。神奈川県、愛知県、大阪府の大学生は17万人、18万人、23万人ですから、人口比から考えても、東京への大学生の集中が分かります。地方出身の大学生の多くは下宿していますから、災害対策が不十分な可能性があります。卒業後、彼らが東京の企業に就職すると、東京一極集中がさらに進むことになります。

 都道府県別の1世帯平均人員(2015年)は、東京都は最低で1.99人、全国平均の2.33人と比べ2割程度少なく、一人世帯が多くを占めています。都道府県別の合計特殊出生率(2018年)も、東京都は最低で1.20人と、全国平均の1.42人を大きく下回っており、女性の生涯未婚率は、最高の19.2%と全国平均14%を大きく上回っています。このように、東京は独り身の人が多く、災害に孤立する人が多いことが心配です。

 東京都の消防職員数は1万9千人強と、全国の職員数16万7千人の1割強を占めますが、消防団員の数は2万2千人と全国81万8千人の3%弱しかいません。人口当たりの消防団員数は大阪、沖縄に次いで少なく、公的消防力に頼ることになっています。住民や企業は、地方に比べて一層の備えを進めなければいけません。

 

 やはり、東京に多くが集中しすぎているようです。テレワークにも慣れ、コロナ禍で私たちの価値観も変わりつつあります。何とか、自律・分散・協調型の国土に変えていきたいと思います。そのためには、東京の人たちの価値観が変わると共に、地方がもっと魅力的になる必要があります。災害被害を軽減し、豊かな日本の未来を拓くために、皆で頑張ってみませんか。