1月22日未明の日向灘地震を受け、気象庁が運用する「南海トラフ地震臨時情報」の周知が不足しているとし、徹底を求める声が専門家の間で強まっている。南海トラフ地震の切迫性が高まる中、「今回の地震を警鐘と捉え、改めて臨時情報への意識を」(岩田孝仁・静岡大防災総合センター特任教授)との指摘が広がる。
 「もし臨時情報が発表されていたら、初めてのことで大騒ぎになったのではないか」。名古屋大減災連携研究センターの福和伸夫教授はこう振り返る。今回の地震南海トラフの想定震源域での発生だったことに加え、規模はマグニチュード(M)6・6と情報発表基準のM6・8に迫っていた。
 臨時情報は運用から2年以上がたつものの、まだ発表事例もなく、市民の理解は進んでいない。本県の2019年度の県民意識調査では、臨時情報を「知っている」との回答は15%にとどまった。実際に発表された場合は事前避難など危険度合いに応じた防災対応をとる必要があるが、福和教授は「内容を知らなければ、その時に右往左往してしまう」と懸念する。
 気象庁南海トラフ地震評価検討会の平田直会長(東京大名誉教授)は今回の地震について「基準未満だったので、(検討会の)臨時会は開催しないと気象庁と確認した。関係機関の情報収集はしっかりしていた」と説明。これまでに得られたデータなどから「南海トラフ地震が発生する可能性が特段、高まったとは現時点では考えていない」との認識を示した。
 一方で「いつ起きても不思議ではない状態は変わらない。その認識を忘れず、日頃からの備えを」と呼び掛ける。岩田特任教授も、臨時情報発表時の防災対応についての議論がここ数年、コロナ禍もあって途絶えていると指摘し「今回の地震をいま一度、自治体、市民が考える機会にしてほしい」と訴えた。
 内閣府は今後、臨時情報の啓発や、発表された場合の防災対応について、関係機関や自治体の先進事例を共有し、対策を強化する方針。二之湯智防災担当相は1月末の記者会見で「関係自治体と連携し、臨時情報の周知に努めていきたい」と強調した。

 <メモ>気象庁による「南海トラフ地震臨時情報」には「調査中」「巨大地震注意」「巨大地震警戒」「調査終了」の4種類があり、それぞれに発表基準を設けている。最も危険度が高いのは想定震源域でM8以上のプレート境界型地震が起きた場合などの「巨大地震警戒」で、発表された場合は後発地震に備えて沿岸部の住民らに1週間の事前避難などを促す防災対応がとられる。
 気象庁は今回の日向灘地震について「M6・8以上だったら、臨時情報(調査中)を発表し、評価検討会(臨時会)を開催していた」としている。7日の検討会定例会で南海トラフ地震との関連性などを改めて議論する見通し。