2016年の熊本地震で動いた日奈久断層帯(益城町-八代海南部)の北端に位置する熊本県御船町の高木地区一帯で、地震で生じた道路の亀裂やずれが今も少しずつ広がっているとみられることが26日までに、東北大災害科学国際研究所の遠田晋次教授(地質学)らの調査で分かった。遠田教授は、断層が動き出して止まらなくなる「余効すべり」が原因とみている。
余効すべりの動きは時間がたつにつれて弱まるとされ、高木地区一帯では現在、年2~3ミリのスピードで動いていると推定。国内の内陸部で起きた地震で、余効すべりを目視で確認したのは初めてという。熊本地震の際は御船町で最大震度6弱が観測された。
遠田教授らの調査では、地震によって約50センチの横ずれが起きた高木地区のブロック塀を1年後に改めて確認。ずれが同方向に20センチ広がっていた。高木地区と接する益城町道も亀裂が補修された後で、約3センチの横ずれを確認した。この横ずれによって白線はクランク状になっている。
御船町は高木地区で、町道の大きな亀裂を全面的に補修した後で再び段差やへこみを確認。20年に改めて補修したものの、今年に入って数センチのへこみが確認されるようになった。
熊本地震では日奈久断層帯の一部と同時に、布田川断層帯の布田川区間(南阿蘇村-益城町)も大きく動いた。遠田教授はこの区間での余効すべりはほとんどみられないとして、「(断層が動く要因となる)ひずみが十分に解消された」と分析している。
一方、日奈久断層帯で続く余効すべりについては、「ひずみの解消に向けた微調整の動きなのか、地震が発生しやすくなっていることの現れか、今のところ分からない」と指摘。余効すべりが日奈久断層帯を刺激すれば「将来、熊本地震と同規模の大地震につながる可能性もある」として、注意を呼びかけている。
熊本地震の発生から6年が経過しても、遠田教授は「熊本県内の地震活動は依然高い状態と言える」と強調。「将来の予測に向け、亀裂やずれがどうなるか継続調査する必要がある」としている。(中原功一朗、河北英之)
